おお、しゃれ 「 教養あるね 。 いつから? 」「今日よ」 あるいは 、 また 、 「 奥さん どこの生まれ?」「名古屋よ」「道理で、なごやか、だ」 などなどと笑いが生ずる。おわかりだろう か 。 前者では 、教養と今日よ、が呼応している。者では、 名古屋 となごやかがが呼応している。意味の 上では全く繋がりのないこと を 発音が似ているということ で関連 させ、それを楽しむわけである。こうした言葉の遊びを 「しゃれ」と呼び、 日本人の生活の中では 、 すこぶる日常的なものである。あまり上等なユーモアで はない、 という自覚もあって。 「駄じゃれ」とも いう。 「駄じゃれ」 はつまらないもの、ダメなもの 、 の意味である 。 ほかの言語 にも、例えば英語にも 、似た ような言葉 遊び があるようだが 、日本ほどおおくあるまい。日本語は、 音の数が少ない。 アイウエオ 表の 51文字、それ に濁点や半濁点 の 25 文字を加えて 合計 76 文字で 、 一応日本語は 表記できることになっている。 実際に 用いる音は、 もっと多いけれど、英語や中国などを調べてずっと少ない 。少ないから、同音異義語が生まれやすい。「 記者の汽車、汽車で帰社した 」 なんて 、日本人は耳で聞いて、ちゃんとわかるのである ので、 同音異義語多いので、 すっかり慣れているのだ。今、 い述べた「しゃれ」 も、これと深く関係している。似た音が生まれやす く、 それに慣れているからこそ 「しゃれ」 が楽しめるのだ。 職場を見渡せば、この 「しゃれ」 をよく言う人が一人 や 二人 、きっと いるだろ うし、 日本の には 、 落語は言うに及ばず、あごなどにも、この 手 法はよく用いられている。 「しゃれ」を理解することは、日本語の上級コースとして不可 欠 であろう 。 さて、埼玉県に行田という市がある。 昔は 忍 といった 。 東京 を 戸と う言 ったのと同じである 。 そこで 「ぼつぼつ、行田の米だね」 。 忍で取れた米なら、忍 米 、 つまり、おしまい 、 となる 。 現代では 、 日本人でも でも知る人の少ない 。 古い、「しゃれ」 である。 (『 日本語教育通信 29号 国際交流基金日本語国際センター 』) 注釈 : 1、 すこぶる :非常 に。大変 。 2、 落語 :滑稽な 話をし 、終わりに「おち」 という しゃれをつけて、興趣の興を誘う話芸。 3、 和歌:日本固有の詩歌を指し、 長歌 、 短歌 、 旋頭歌、片歌などが含まれている。現代では 5・7・5・7・7 となる 31 文字の短歌を指すのが 一般的 である。