1959 年は板ガラス製造において記念すべき年である。この年、ある画期的(注 1 )な板ガラス製造法の実用化に成功した。この製造法の発明から実用化までは、苦難の道であり 7 年の年月がかかったが、この方法によって、表面に輝きがあり、平らでゆがみのない(注 2 )板ガラスを連続的に低コストで作ることができるようになったのである。 ガラスが窓に使われ始めたのは今から 2,000 年以上前のことで、初期の板ガラスは、分厚く、泡を多く含み、表面に傷がたくさんある粗末な品質のものだった。 4 世紀ごろになると、表面に輝きがある薄い板ガラスの製造法が発明されたが、作れる板ガラスの大きさには限りがあった。その、より大きな板ガラスの製造法も発明されたが、この製造法においてもゆがみをなくすことはできなかった。それだけでなく1 戻りをしてしまった点 もある。溶かしたガラスを手作業で平らにしたため、表面に輝きがなかったのである。磨くことで輝きを出すことは可能だったが、特別な技術が必要で、手間も費用もかかった。 このように、板ガラスの歴史を通じて多くの製造法が発明されたが、いずれもどこかに問題点を抱えていた。それらが一気に解決され、質の板ガラスを大量生産することが可能になったのが 1959 年なのである。 1960 年代の日本は自動車の普及が進み、同時に安全性の向上が求められていた時期である。2 この成功 があって初めて、これらの需要にこたえることが可能だったと言えるだろう。 (注 1 )画期的:今までと大きく異なる、新しい (注 2 )ゆがみのない:ここでは、凸凹のない