めだか 杉 宏 春になると、小川や池の水面近くに、めだかが姿を現します。めだかは、日本に住む魚の中では、もっとも小さい魚です。体長は、三、四センチメートルにしかなりません。 めだかは、のんびり楽しそうに泳いでいる ようです が、いつも、たくさんの敵に狙われています。「田龜」や「源五郎」、「やご」や「水螳螂」などの、水の中にいる昆虫は、特に恐い敵です。大きな魚や「ざりがに」にも襲われます。 では、めだかは、 そのような 敵から、 どのよう にして身を守っているのでしょうか。 まず、第一に、小川や池の水面近くで暮らして、身を守ります。水面近くには、敵があまりいないのです。 第二に、すいっ、すいっと素早く泳いで、身を守ります。近づいてきた敵から、さっと逃げることが上手です。 第三に、小川や池のそこに潜っていって、水を濁らせ、身を守ります。近づいてきた敵に見つからない ように 隠れるのです。 第四に、匹も集まって泳ぐことによって、身を守ります。敵を見つけためだかは、間に知らせます。すると、みんな一斉に散らばって、敵は目移りしてしまいます。その間に、逃げてしまいます。 めだかは、こうして、敵から身を守っているだけではありません。めだかの体には自然の厳しさにも堪えられる、特別な仕組が備わっているのです。 夏の間、何日も雨が降らないと、小川や池の水がどんどん少なくなり、「鮒」や「鯉」などは、次々に死んでしまいます。 でも、めだかは、体が小さいので、わずかに残された水溜りでも大丈夫です。小さな水溜りでは、水温がどんどん上がりますが、、めだかの体は、四十度近くまで水温が上がっても堪えられる ように できています。 また、大雨になると、小川や池の水が溢れ、めだかは大きな川に押し流されてしまいます。大きな川から海に流されてしまうこともあります。ふつう、で暮らす魚は、海水では生きることができません。また、海に住む魚は、の中では死んでしまいます。 しかし、めだかは、に海水の交ざる近でも生きる ことができます 。めだかの体は、海水にも耐えられる ように できているのです。海に流されためだかは、やがて、満ち潮に乗って、川に戻ってくることもできます。 小川や池の中で泳いでいるめだかを見ると、ただ「おゆうぎ」をしているようにしか見えないかもしれません。しかし、めだかは、いろいろな方法で敵から身を守り、自然の厳しさに耐えながら生きているのです。