人間には、道具をつくり、その道具に適応しようとする性質がある。そしてその道具に適応し過ぎてしまうことで、本来の人間の能力を削がれて(注1)しまうことがある。その適応力が仇(注2)となり、人間がつくった道具により人間が左右される。まるで、人間がつくった道具に人間がつくられてしまうかのように。歩きながらでもスマートフォン(注3)を使いたいという欲求にかられ、挙げ句に視野を大きくそこへ奪われ、自ら、そして他者をも危険な状況に追い込んでしまう。これもその現象のひとつだ。 (小川和也『デジタルは人間を奪うのか』による) (注1)削ぐ:削る (注2)仇:ここでは、害 (注 3 )スマートフォン:パソコンの機能もある携帯電話