ひさし(注 1 )さんが、 「エッセイとはすなわち、自慢話である」といったことを書いていらしたのを、以前読んだことがありますが、私はその文を一読した瞬間、「ああっ!」 と叫んで赤面(注 2 )したのでした。 エッセイ=自慢、とはまさにその通り。エッセイを書く仕事をしている私は、心のどこかでそのことを感じつつ、気付かない努力をしていた気がする。しかしそのようにズバリ言われると、「私は今まで、自慢話によって、口を糊して(注 3 )きたのだなぁ」ということが、明確に理解できるのです。 (酒井順子『黒いマナー』による) (注 1 )ひさし:日本の小説家 (注 2 )赤面する:顔が赤くなる (注 3 )口を糊する:ここでは、生計を立てる