仕事のことで、あなたは同僚のに助けを求めた。は自分の仕事を犠牲にして、時間もお金も使って助けてくれた。しかし結果は、あなたの窮状をわずかに救ってくれたにすぎない。他方、あなたは小沢氏にも助けを求めた。小沢氏は電話 1本で、窮状を救ってくれた。さて、あなたは二人のどちらにより強い恩義を感じるだろうか。 対人心理学では、恩義の強さはコストとあなたが得た利益で決まると考える。 コストとは、相手があなたを助けるために費やした時間やお金、もろもろの犠牲のことである。利益もお金や物とは限らない。地位や名誉、失わずにすんだ面目の場合もあるだろう。 コストや利益が何であるにせよ、恩義はコストが(a)ほど、また利益が(b)ほど、強く感じる。恩義の強さは、コストの量と利益の量の(c)で決まるというのである。 「恩や義理は、日本人の人間関係の根幹にかかわる問題だ。それを 1コストだ利益だなどいうのはけしからん」と思う人もいるだろう。(d)、「恩を売ったり」「借りを返したり」、見舞いの半返しをしたり??2日本人の人間関係だって意外と計算高い。 そこで、冒頭の話をこう言い換えてみよう。 の払ってくれたコストが(e)、彼がもたらした利益を(f)とするとには 11の恩義が生じる。小沢氏の支払ったコストは(g)、もたされた利益が(h)とすると小沢氏にも11の恩義が生ずる。同じ値になったとき、実感として、あなたはどちらに強い恩義を感じるだろうかというのが当方の問いだったのである。 この問いに対して、アメリカの心理学者は、小沢氏の方に強い恩義を感じるといっている。結果が重要だということであろう。ところが、日本人を対象として検討したところ、〔i〕という結果が出た。 どうも日本人は、結果もさることながら、助けてくれるために多くのコストを支払ってくれたという事実を重んじて、恩義を感じるようである。 注1 窮状:非常に困った状態 注2 恩義:恩と義理、人から受けた親切に感謝し、いつかお礼をしなければならないと思う気持ち 注3 根幹:基本、基礎 注4 けしからん:許せない 注5 半返し:贈られた金や品物の半額にあたるものを相手に返すこと 注6 当方:私