においは、過去の経験をその時の気持ちとともに思い出させることがある。音楽を聞いたり、景色を見たりしたときも 同じようなことがあるが、においのほうがもっと強い。においには、何のにおいかと考えさせる前に、体や心を動かす力 が あるようだ。 においの 1このような特徴 は、いろいろな形で利用される。体や心を休ませたり、集中する力をつけたりするためにも 使われるが、最近では次のような利用方法が増えている。例えば、あるスーパーで、人工的に作られたカレーのにおいを壳 り場に流したら、カレーの材料がいつもより 3割ぐらい多く売れたそうだ。においが、その味やそれを食べたときの満足感 をはっきりと思い出させ、また食べたいと思わせたからだろう。また、衣類のような、においのしない商品の売り場に、入 エ的な花のにおいを流している店もあるそうだ。においによって商品のイメージを作ろうとしているのだ。 これらの話を聞きたときは、においに 2 そんなに使い方 があったのかと驚いた。 専門家によると、今ではほとんどのにおいが人工的に作れるそうだ。しかし、人工的なにおいは本当のカレーや花のにお いではない。小学生にある実験をしたら、自然のイチゴのにおいよりも、人工的なイチゴのにおいのほうを本当のイチゴの においだと思ってしまう子どもが多かったそうだ。 作られたにおいばかりに固まれていると、それに慣れてしまい、本当のにおいが忘れられていく。人工的なにおいを利用 する可能性が広がることはいいことではあるが、本当のにおいも忘れないようにしたい。