森林のはたらき 多摩川は、日本では珍しい 1「おとなしい川」 として知られています。ところがこの年の九月、台風の大雨で大暴れをしたのです。堤防がけずられて家が流され、世間をびっくりさせました。 この時多摩川の水は、三日たっても四日たっても、なかなか減りませんでした。水はいつまでも川いっぱいに、とうとうと流れていました。人々は「水が引かない。」と大騒ぎをしたものです。 しかし、 2それ こそは、 3多摩川が「おとなしい川」であることの証拠だったのです 。なぜなら、森林のない暴れ川なら、水は一度にどっと出て、たちまち引いてしまいます。ところが、この時上流に降った雨は、大森林のふところ深く吸い込まれ、三日にも、四日にもわたって、少しずつ少しずつ、はき出されていたのです。 4もしも上流に大森林がなかったら 、三日分、四日分のその水は、一度にやってきたことでしょう。堤防をどんなに頑丈に造っても、水は乗り越えてしまったことでしょう。家々のひしめく東京は水にのみこまれ、どれほどたくさんの生命がうばわれたかしれません。